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今夜の番組チェック

隊長の洗脳演説会

シチューエーション・ラヴ

掲示板の発言に促され、何となくシチューエーション的なものを書いてみようというヤボ企画。

はっきり言って、ただ単なる筆者の妄想ですが、気にしないでください。







『夏祭り』

ドンドンっという連続する炸裂音が、まだ夕闇になる前の茜色の空に響いた。

午後六時……夏祭りの始まる時間だ。

大して広くも無い神社の境内近く。周りはすでに親子連れや仲良く手を繋いだカップルでごった返していた。

「お兄ちゃん、一人かい!? 焼きソバ喰わねえかい!?」

無意味に大声を張り上げて俺に話しかける出店のオッサンを無視しつつ、俺は手にした腕時計を睨みつける。 時計の針が指すとおり、約束の五時半はとうの昔に過ぎた。

おかしい。
今日はテスト最終日で授業は午前中だけだったし、高校から帰ってシャワーを浴びて着替えてそれなりに化粧したって、十分間に合うはずの時間だ。

俺はわざわざ一時間前に約束の場所に着いてたっていうのに、あいつ、一体何やってんだか。

“……初デートからしてこれでは、先が思いやられるなぁ”

この日のために無理して買ったシルバーアクセサリをいじりながら、気ままに流れる細い雲を見やったときだった。

カランコロンという軽やかな木の音が、俺の耳を心地よく刺激した。同時に、昼よりも少し涼しくなった風が、 ソース焼きソバの匂いを押しのけてシャンプーの香りを俺の鼻まで運んでくる。ちなみに、続けて聞こえてきた、 ハァハァ…という小さな息切れの音には、聞き覚えがあった。


「ゴメン!! ……待った?」


顔の前で手を合わせ、ペロッと舌を出して謝ってきた、晴れやかな浴衣姿の女の子。
彼女の濃いブルーの浴衣には色とりどりの花火が描かれており、それは彼女の活動的なショートカットの髪や 手に持った小さな黒い巾着、そして鼻緒の赤い下駄によく合っていた。

誰だ?

一瞬分からなくなったが、「どうしたの…? やっぱ怒ってる?」と心配そうに覗き込んできた顔を見て、 ようやく誰か分かる。


「いや、まぁ別に……」


我ながら気が利かない返事だとは思ったが、俺にはそれで精一杯だった。可愛すぎて面食らったなどと正直に 言おうものなら、彼女に末代まで馬鹿にされてしまう。


「その、浴衣?…着てきたんだ?」


見れば分かるだろうと言ってやりたい俺の質問に、彼女が顔を赤らめた。


「え? あ、う、うん。あたしはほら、別に普段着でも良かったんだけど、お父さ…パパがさ、夏祭りって言ったら 浴衣だろ、とか言って? うん。それでさ、しょうがなく着てみたわけ。べべべべ別に特別な意味とか無いんだけど……」


彼女は手を振りながら、慌てたように早口でまくし立てた。
そんな彼女の浴衣からは、明らかに買ったばかりの布から匂う独特の糊の匂いが漂っている。


「その……」


彼女が再びもごもごと口を開いた。その頬が赤いのは、夕焼けのせいだけではない。


「似合う……かな?」


彼女の上目遣いに、何故か俺も自分の頬が赤くなる音が聞こえる。


ドクン。ドクン。ドクン……。


おいおい俺の心音って、こんなに大きかったけか?


「ま……似合ってる…んじゃねぇの? その、そういうのってよく分かんねぇけど」


微妙すぎる俺の返事。
でも、彼女にとっては「似合ってる」の一言が入っていれば良かったらしい。浴衣に描いてある花火のように、ぱっと顔が華やいだ。


「あはは……ありがと!!」


悪戯っぽくニッと笑った彼女が、巾着を持ってないほうの手で俺の手を掴んできた。途端、ほわっとした温もり が、俺の手から体全体を包み込む。



僅かに時間が止まった。



ドンッ!!


空を割る音。

それに呼応し、時が再び動き出す。


「あ! あたし、リンゴ飴食べたい!!」


照れ隠しだろうか、やけに大きな声を上げた彼女は俺の手を引っ張り、人ごみに向かって駆け出した。














『雨宿り』


やれやれ。全くもってついてない。

僕はとうの昔に潰れてしまった古本屋の軒先から空を見上げつつ、そう思った。


どしゃ降り。


天気予報の20%ってのは大嘘だったんだろうか。
参考書やら教科書やらで重くなった鞄を頭の上に掲げつつ、必死で走ってこの軒先に着いたときには、もはや 救いようが無いほどにずぶ濡れだった。足を動かすたびに靴の中はぐちゅぐちゅと気持ち悪いし、さっきから 眼鏡についた水滴が視界を遮るのも腹立たしい。

やはり親の言うことなど信用せずに傘を持って来るべきだったと、今さらながら悔やまれる。
だがしかし、今何より失敗だったと思うのは――


「はー、もうっ! あんたがトロいから濡れちゃったんだからね!! 何で私まで……」


このさっきから横で文句を垂れている幼馴染と帰路を共にしてしまったことだ。

いや、というより、僕は別に共にしていない。彼女の方が勝手について来たのだ。
それなのにこの言われようだ……全くもって理不尽極まりない。

無論、彼女は自分が僕についてきたのだとは微塵も思っていないだろう。
僕よりも三ヶ月遅く生まれたくせに全く僕を年上などと思っていない彼女にとって、僕はいつまでたっても自分が 見ておかねばならない“弟”らしい。
…確かに、水泳部のエースで体力もある彼女と天文学部で細々と活動している僕とを並べて見ると、そんな関係に 見えなくも無いのだが。

まぁどちらにしろ、今の状況がついてないことには変わり無――


「すっかり……濡れちゃったね」


不意に横から聞こえてきた寂しげな声に、僕はビクリとした。
他に誰かいたかと慌てて横を見るが、彼女のほかに誰もいない。とすると、必然的に今の言葉は彼女が吐いた ということになるが、それにしてはいつもの元気が無さすぎる。


「あのさ……私って女としての魅力、無いのかなぁ」


突然の質問に、僕は固まった。
その僕の顔を窺うかのように、彼女がやや崩れたように笑いながらこちらを向く。濡れた髪をかきあげられて露わになった小麦色に焼けた顔、 その頬には、雨とは違う水が滴っていたような気がした。


「……今日、サッカー部の先輩に告ったんだ…。そしたら、“悪いけど、お前みたいな筋肉女は女として見れない” だって。……あはは、笑っちゃうよね!」


笑っていない、彼女の顔。降りしきる、雨。

そして、


何故かズキリと痛む、僕の心。


予想だにしない展開に僕はしばしボンヤリとしていたが、彼女の髪から滴り落ちた水によってだんだんと 透けていく白いブラウスの存在に気付いて慌てて目を逸らした。水色の下着まで見えると、さすがに幼馴染と はいえ気が引ける。

……いや、目を逸らしたのはそれだけじゃない。彼女の潤んだ瞳が僕を見つめていたからでもある。


「その、そんなこと、ないんじゃないの」

「え?」

「だから、魅力だよ! ……さすがに無いことはないんじゃないかって話」


何を言ってるんだ、僕は。


「それ、本心?」

「……半分、義理」


僕の返事に、彼女が笑った……今度は本当に。


「……ありがと」


嬉しそうに微笑んだ彼女が述べた、囁くような感謝の言葉。
それは、誰かを好きという大切な気持ちが日常に埋もれて気付かなくなってしまうのと同様、耳を凝らさねば雨の音の 中に消えていってしまいそうだった。


どしゃ降り。

今日は、ついてないことはないのかも……しれない。














『ミニスカート』

何でこういうことになったのか。

俺は目の前に飛び交う星を数えながら、そう思った。

原因は明らかだ。それはたぶん、三日前の俺の発言。


三日前、俺は大学で彼女と昼飯を食っていた。
大学に入ってから知り合った彼女のその日の格好は、ジーンズにTシャツといったラフな格好。というより、その 前の日もそのまた前の日も、種類は違えど似たような格好。
まぁ中学、高校、そして大学に入ってまで陸上一筋の生真面目スポーツウーマンを貫き通している彼女のこと、制服が なくなった今、スカートなんて動きにくいものは履きたくないといった所なのだろう。

俺もそれは承知なんだが……やはり男心としては、一度くらいは彼女の華麗なミニスカート姿を拝んでみたいところ。
無理を承知で話を振ってみる。


「お前さ、今度のデート、ミニスカ履いてきてよ」


ぶほっと豪快に吐き出された野菜サラダが俺の顔面を直撃する。


「は、はぁっ!? わ、私がスカート嫌いなの知ってるでしょ!? なんで今さら……」

「いやまぁ知ってるけどさ、一度ぐらいは俺の自慢の彼女のおみ足を拝見したいじゃん……エッチ以外のときにも」


ひゅばっっと豪快に繰り出されたストレートが俺の顔面を直撃……って、いってぇえっ!!


「ええええっちとか大きな声で言わないでよっ! そ、それに、私はスカート似合わない人なの! ……断固、拒否!!」


顔を真っ赤にしながら、彼女がぶんぶんと首を振った。それに合わせて、頭の高い位置で結ばれたポニーテイルも 右に左に揺れ、拒否反応を明らかにする。


「似合う似合わないは当事者の俺が決めるさ♪ ま、今度の買い物はミニスカで決定ということで。約束ね☆」

「……勝手なことばっか言って……ばっかじゃないの…」


明らかに不機嫌になった彼女は、その言葉を最後に、ややすねたように頬を膨らませながら黙々と残りのランチを 平らげる。
その後は、俺が何を話しかけても完全無視。……生真面目なだけに、一度ひねくれてしまうとヒジョーに厄介 なのが、彼女の扱いの難しい所なんである。

やっべ、やりすぎたか?


そう思いつつ今日という三日後を迎えた俺なのだが。

これは…。


「……何?」


俺の視線が気に入らなかったのか、彼女がムッとしたように口を尖らせる。
待ち合わせの店の前に現れた彼女の今日の格好はというと、

ミニスカート。そらもう、まごう事なきジーンズ生地でフレアタイプのミニスカートだ。
そして上もラフなTシャツではなく、ぴったりと体に張り付くタイプのタンクトップだった。

もともとスタイルのいい彼女のこと。
本人は俺の視線だけが気になっている様子だったが、周りの男共も食い入るように彼女のことを凝視していた。

俺、何となく優越感。


「すっげ!! 何だ、お前全然似合ってるじゃん!!」


感動した俺は、素直に感想を述べた。
似合っていないどころか、スカートになったら魅力も倍増だ。


「そぅ……かなぁ…」


彼女は赤くなった顔をややうつむきかげんにして、もじもじとスカートの端の方を手で押さえていた。しかし よく見ると、若干口元が緩んでいる。
やっぱり嬉しいんだろうか。
まぁどちらにしろ、いつもの活動的な彼女には決して見られない貴重な画……俺は一生目に焼き付けようと しっかと眼を見開いて見ていたのだが――


「きゃあっ!!??」


突然の突風が店の前を駆け抜け、俺達をも巻き込んだ。

ふわりと持ち上がる彼女のフレアスカート……慌てて両手で押さえたようだが、時すでに遅しとはこのこと。


「………見た?」


熟したリンゴのように顔を真っ赤にする彼女の問いに、俺はビシッと立てた親指と満面の笑みで応えてやる。


「白と水色のストライプッ!!」

「――――――――――ッッ!!」


ぶぉんっっと豪快に繰り出された回し蹴りが俺の顔面を直げk(以下略。

飛び交う星を二十三個まで数え終わった俺が出した結論。


“陸上部の蹴りは、半端じゃない。”








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いかがだったでしょうか。

またこういうシチュエーションを書いてほしいとか希望があったら、やってみたいとか思ってる廃人です。

んじゃ、また。




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