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真夏の恐怖体験
よし。 じゃあせっかく夏なんだし、怖い話でもしようか。 言っておくが、マジで怖いからな。せいぜい寝小便たれないように、気をつけておけ。 これは俺がこの前の日曜日の夜に仕事から帰る時のことだった。 俺が働いている店は飲食店だから、週末がかなり忙しい。 特にその日は近くで祭りがあったらしく、とんでもない忙しさだったのだ。 そして結局帰る時間は夜の零時を過ぎてしまった。 ちなみに俺は月曜日は特にすることが無いので、いつも家でまったりしているんだが、当然その日曜の次の 月曜もまったりする予定だった。 「明日は朝寝ができるなー」 そんなことを考えながらバイクで走っていると、気を張り詰めていた仕事という束縛から放たれた解放感と ひんやりとする夜風を切る爽快感とが混じり合い、自然と気分が高まっていく。 そして気付けば俺はバイクで走りながら歌を歌っていた。 夜中だし、バイクのエンジン音は大きいから問題無い。 信号待ちで止まっていたときも、まだ歌っていた。 横に車が並んで止まったが、どうせクーラー全開で窓も閉めているだろうから、問題無し。 もう俺の心はすでに月曜日。 歌にも心がこもる。 しかし信号で止まってから二十秒ほどして、俺は一つの違和感に気付いた。 さっきから隣で止まっている車の中からの音楽が、やけにリアルな音声で聞こえてくるのだ。 おかしいぞ、窓を閉めているのに、なぜにこんなに近くから聞こえるのだ? まさかと思いつつ、俺は恐る恐る横を向いた。 はい、全開だったのはクーラーではなく、車の窓でした! ヤッチマッターーッ! ( ̄□ ̄;) あまりの衝撃に、俺は固まる。 がしかし、同時に車内のカップルもビミョーな表情で固まっている。 そりゃそうだろう、そのとき俺が気分も軽やかに大声で歌っていたのは、 勇者王ガオガイガーの主題歌 だったからだ! 400ccのアメリカンバイクにまたがり、(夜なのに)サングラスをかけた妙なヤツが、いきなり 隣で勇者シリーズの熱きテーマソングを歌っている。 これほどカップルにとって微妙な空気があるだろうか。 早く変われ早く変われ早く変われ… 半ば呪文のように心の中で叫び続ける俺。 しかし、ここの信号のまた長いこと長いこと。 致し方なくうつむきながらエンジンを吹かし続け、こっそり横を盗み見ると、やはり彼らもややうつむき 加減だった。 さっきまではもしかしたらロマンチックな空気だったのかもしれない。 だが全てはこの勇者シリーズを歌う男に砕かれたのだ。 哀れとしか言いようが無い。 三十秒後、信号は青に変わった。 俺はそのときウィリー寸前までエンジンを吹かし、その場を去ったのだった。 え? 全然怖くない? ばっかやろう、俺は死ぬほど怖かったんだよ! [戻る] |