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正義の味方はどこだ?
水戸黄門というご長寿番組がある。 日本中を死ぬほど周り、もういい加減周りすぎて顔知られまくりとも思うのだが、何故か一度もばれる ことなく平然と街中に侵入し、越後のちりめん問屋の隠居という嘘をしたり顔で言い放ち、貧乏な家に 勝手にあがりこんだ上に一週間ほど滞在し、そこの娘さんが都合よく拉致られそうになったらヒーロー顔で 割り込んできて悪役をいびり倒すという、すばらしい番組である。 最後は必ず正義が勝つ。 勧善懲悪を地で行くその強引なストーリー自体は嫌いじゃないが、どうも腑に落ちない点がある。 まず第一に、 悪徳お代官とその下僕(いわゆるゴロツキ)の連中を殴り倒す意味が分からない。 彼らがゴロツキと代官を殴りつけるのと、どこぞのアンパン男が空の果てまで黴菌男を殴り飛ばすのでは 訳が違う。 その違いは、アンパン男が暴力という最悪な手段しか持っていないのに対して、黄門一行は“権力”という 最大の武器を持っているということだ。彼らの背後には「徳川幕府」という当時最強のバックボーンが 付いているんである。 相手は同じ人間なわけだし、どうにかすれば殺すこともできるはずなのに、悪代官たちがそれをしないのは、 どうせそんなことをしたって幕府に捕まり壮絶な拷問をされた上で殺されるのが目に見えているからだ。 つまり最初に権力を見せれば、わざわざ殴らなくても相手は即座に抵抗の意思を失くすわけである。 それじゃなくても、あの爽やかなエンディングの背後では、悪代官は当然打ち首獄門、下手したらその家族 まで島流しにされ、よくてもお家取り潰しは免れず、小さい子供を連れたまま母親は街から叩き出されている であろうというのに、さらに容赦なく悪代官たちを殴りつけるご一行。 正真正銘Sだよな。 第二に、 この時代の世界構造をよく知らない哀れな農民が勘違いしていることである。 彼らは生活が大変貧しく、常に今日の食事が食べれるかどうかという状態。そんな中、突然現れた白ひげの 爺さんが、年貢を少し多く取っていた悪代官をやっつけてくれた上、拉致られていた娘さんまで取り返して くれた。 こりゃ黄門さまさまじゃあ、というわけだが、こいつら肝心なことを理解していない。 「なぜ年貢が高いのか?」という点だ。 実際、なぜ年貢が高かったのかというと、簡単に言えば幕府がそれだけ要求していたからである。 「生かさず殺さず」という言葉をご存知だろうか? 当時の幕府が謳っていた支配方法である。つまり、農民たちが反抗できないように、あえて常にぎりぎりの 生活しかできないようにしていたらしい。それに加えて、各藩にも参勤交代やら何やらとありとあらゆる 枷を与え、とにかく全てが幕府に逆らえないようにしていたというわけだ。 ということは、農民たちの生活が非常に苦しく、借金のかたに大事な一人娘まで取られてしまったのは、 そのほとんどが幕府の責任にあるということになる。 だというのに、その元凶とも言うべき幕府のトップ(引退はしてるけど)がのこのこ出張ってきて、 自分がまいた種を下っ端の役人が少し賄賂取ったことと直結させた上で(権力と暴力によって) 全てを解決したと思わせ、さらに幕府の株を上げておこうというこの極悪非道な行為!! このジジイ、まったくもってただもんじゃねぇな。 こうやって見てみると、結局、いつの世の中も正義の味方なんて都合のいい職業についてるヤツなんて いないんだろうね。 …ま、だからこそ、みんな憧れるのかもしれないけど。 [戻る] |